りませんような丈夫でございましたが、月夜の晩に縁側で裁縫《しごと》を致して居りましたが、其処《そこ》へ倒れたなり、ぽっくり死去《なくな》りましたので、それゆえ種々《いろ/\》取込んで……お小袖《こそで》ですから間に合わん気遣いはないと存じまして、御無沙汰をいたしました、今年は悪い時候で、上方辺は大分水が出たという話を聞きました、お屋敷の大殿様も若殿様もお加減がお悪いそうで」
村「あゝ誠にお長引きで」
縫「私《わたくし》は毎《いつ》も然《そ》う申しますので、伯母が死去《なくな》りましても悔《くや》むことはない、これ/\のお屋敷の殿様が御病気で、お医者の五人も三人も附いて、結構なお薬を召上り、お手当は届いても癒《なお》る時節にならなければ癒らんから、くよ/\思う事はないと申して、へえ」
村「何分|未《ま》だお宜しくないので、実に心配しているよ、夜分はお咳が出ての」
縫「然《そ》うでございますか、それはまア御心配でございますね、併《しか》しまだお若様でいらっしゃいますから、もう程無《ほどの》う御全快になりましょう」
村「御全快にならなくっちゃア大変なお方さまで、一時《いっとき》も早くと心配し
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