昼の支度をしておくれ」
定「畏《かしこ》まりました」
と是から午飯《ひる》の支度を致して、午飯《ひるはん》を喫《た》べ終り、お定が台所で片附け物をして居ります処へ入って来ましたのは、茶屋町に居りますお縫《ぬい》という仕立物をする人で、好《よ》くは出来ないが、袴《はかま》ぐらいの仕立が出来るのでお家中《かちゅう》へお出入りをいたしている、独り暮しの女で、
縫「御免遊ばして」
定「おや、お縫さん、よくお出掛け……さ、お上《あが》んなさい」
縫「誠に御無沙汰をいたしました、此間《こないだ》は有難う……今日《こんにち》は御新《ごしん》さんはお宅に」
定「はア奥にいらっしゃるよ」
縫「実はたった一人の妹《いもと》で、私《わたくし》が力に思っていました其の者が、随分丈夫な質《たち》でございましたが、加減が悪くって、其方《それ》へ泊りがけに参って居りまして、看病を致してやったり、種々《いろ/\》の事がありまして大分《だいぶ》遅くなりました、尤《もっと》もお綿入でございますから、未《ま》だ早いことは早いと存じまして」
定「出来ましたかえ」
縫「はい、左様でございます」
定「御新造様、あの茶屋町のお縫
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