頼者の姓名が云えんと云うのは訝《おか》しい、まだ手前は悪人へ与《く》み致して居《お》るように思われる、手前が云わんなら私《わし》の方で云おうか」
源「へえ」
秋「神原五郎治兄弟か、新役の松蔭かな」
源兵衞は仰天して、
源「よ好《よ》く御存じさまで」
四十二
喜一郎は態《わざ》と笑《えみ》を含みまして、
秋「何うも其辺《そこら》だろうと鑑定が附いていた、ま宜しいが、彼《か》の松蔭並びに神原兄弟の者はなか/\悪才に長《た》けた奴ゆえ、種々《いろ/\》罠をかけて、私《わし》が云ったことを手前に聞くまいものでもないが、手前決して云うな」
源「何う致しまして、云えば直《す》ぐに私《わたくし》が殺されます、貴方様も仰しゃいませんように」
秋「私《わし》は決して云わん、首尾好《しゅびよ》く悪人を見出《みだ》して御当家安堵の想いを為すような事になれば、何うか願って手前に五人扶持も遣《や》りたいの」
源「何う致しまして、悪人へ与《く》み致しました罪で、私《わたくし》はお手打になりましても宜しいくらいで、私は命さえ助かりますれば、御扶持は戴きませんでも宜しゅうございます、お出入りだ
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