を切ったって命に障《さわ》る訳もない、中程から切るのだから、何も不自由の事もなかろう」
母「はい、でございますけれども、此の千代は親のために御当家様へ御奉公にまいりましたので、と申すは、私《わたくし》が長煩《ながわずら》いで、人参の入った薬を飲めば癒ると医者に申されましたが、長々の浪人ゆえ貧に迫って、中々人参などを買う手当はございませんのを、娘《これ》が案じまして、御当家のお道具係を勤めさえすれば三年で三拾両下さるとは莫大の事ゆえ、それを戴いて私《わたし》を助けたいと申すのを、私《わたくし》も止めましたけれども、此娘《これ》が強《た》ってと申して御当家さまへ参りましたが、親一人子一人、他に頼りのないものでございます、今|此娘《これ》を不具に致しましては、明日《あす》から内職を致すことが出来ませんから、何卒《どうぞ》御勘弁遊ばして、私《わたくし》は此娘《これ》より他に力と思うものがございませんから」
長「黙れ/\、幾回左様な事を云ったって役に立たん、其のために前々《まえ/\》奉公住みの折に証文を取り、三年に三拾金という給金を与えてある、斯《かく》の如く大金を出すのも当家の道具が大切だから
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