かご》に乗るような身の上でもないから、丹治が負ってせっせと参りました。此方《こちら》は最前から待ちに待って居ります。
作「早速庭へ通せ」
という。百姓などが殿様御前などと敬い奉りますから、益々増長して縁近き所へ座布団を敷き、其の上に座して、刀掛に大小をかけ、凛々《りゝ》しい様子で居ります。両人は庭へ引出され。
丹「へえ御免なせえまし、私《わし》は千代の受人丹治で、母も詫びことにまいりました」
作「うむ、其の方は千代の受人丹治と申すか」
丹「へえ、私《わし》は年来勤めました家来で、店請《たなうけ》致して居《お》る者でごぜえます」
作「うん、其処《それ》へ参ったのは」
母「母でございます」
と涙を拭きながら、
「娘が飛んだ不調法を致しまして御立腹の段は重々|御尤《ごもっとも》さまでござりますが、何卒《どうぞ》老体の私《わたくし》へお免じ下さいまして、御勘弁を願いとう存じます」
作「いや、それはいかん、これはその先祖伝来の物で、添書《そえがき》も有って先祖の遺言が此の皿に附いて居《お》るから、何うも致し方がない、切りたくはないけれども御遺言には換《か》えられんから、止むを得ず指を切る、指
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