をして見ようかと思います」
母「それだから私が云わない事じゃアない、彼《あ》の娘《こ》を不具者《かたわ》にしちゃア済まないから、私も一緒に連れてっておくれ」
丹「連れて行けたって、あんた歩けますまい」
母「歩けない事もあるまい、一生懸命になって行きますよ、何卒《どうぞ》お願いだから私の手を曳いて連れてっておくれ」
丹「だがはア、是れから一里もある処で、なか/\病揚句《やみあげく》で歩けるもんじゃアねえ」
母「私は余り恟《びっく》りしたんで腰が脱《ぬ》けましたよ」
丹「これはまア仕様がねえ、私《わし》まで腰が脱けそうだが、あんた腰が脱けちゃア駄目だ」
母「何卒《どうぞ》お願いだから……一通り彼《あれ》の心術《こゝろだて》を話し、孝行のために御当家《こちら》さまへ奉公に来たと、次第を話して、何処までも私がお詫をして指を切られるのを遁《のが》れるようにしますから、丹治誠にお気の毒だが、負《おぶ》っておくれな」
丹「負ってくれたって、ちょっくら四五丁の処なれば負って行っても宜《え》いが……よし/\宜《よ》うごぜえます、私《わし》も一生懸命だ」
 と其の頃の事で人力車《くるま》はなし、また駕籠《
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