本では「源」]「どうもこれは…」
源「其の代り他人《ひと》に云うといけないよ」
嘉「いえ申しませんでごぜえます」
源「私《わし》も十露盤《そろばん》を取って商いをする身だから、沢山《たんと》の礼も出来ないが、五両上げる」
嘉「えゝ、五両……魂消《たまげ》ますな、五両なんて戴く訳もなし、一疋|捕《つか》まえて六百文ずつになれば立派な立前《たちめえ》はあるのに、此様《こん》なに、大《でか》く戴きますのは止しましょうよ」
源「いや/\其様《そん》なことを云わないで取ってお置き、事に寄ると為《た》めになる事もあるから、決して他人《ひと》に云っちゃア成りませんよ、私《わし》が頼んだという事を」
婆「それは忰も嫁も心配《しんぺえ》打《ぶ》っていますが、他の者じゃアなし、毒な虫をお前様に六百ずつで売って、何ういう事で間違えでも出来やアしねえかと心配《しんぺい》してえます」
源「其様《そん》な事は有りゃアしないよ、此の虫を沢山《たんと》捕《つかま》えて医者様が壜《びん》の中へ入れて製法すると、烈《はげ》しい病も癒《なお》るというは、薬の毒と病の毒と衝突《かちあ》うから癒るというので、ま其様なに心配しな
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