ら」
宗「それは怪《け》しからん、図らず此処《こゝ》で聞くというは妙なことじゃ、江戸の、うん/\職人|体《てい》の下屋敷へ出入る者、宜しい……えゝ御免ください」
と宗達和尚が向座敷の襖《ふすま》を開けて、大勢の中に入りました。見ると矢立を持って鼠無地の衣服に、綿の沢山入っております半纒を着て居り、月代《さかやき》が蓬々《ぼう/\》として看病疲れで顔色の悪い坊さんでございますから、一座の人々が驚きました。
○「はい、おいでなさい」
宗「あゝ江戸のお方は何方《どなた》で」
○「江戸の者は私《わっち》で、奥州仙台や常陸の竜ヶ崎や何か集ってるんで、へえ」
宗「只今向座敷で聞いておった処が、その江戸に久米野殿の屋敷へ出入りをなさる職人というはあなた方か」
○「えゝ私《わっち》でござえやす」
鐵「えおい、だから余計なことを言うなって云うんだ、詰らねえ事を喋るからお互《たげ》えに掛合《かゝりあい》になるよ」
宗「で、その久米野殿の御家来に渡邊織江と申す者があって人手にかゝり、其の子が親の敵《かたき》を尋ねに歩いた処、春部梅三郎と申す者に欺かれて、新町とかで殺されたと云う話、八州が何うとかしたとの事
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