じゃが、それを委《くわ》しく話してください」
鐵「だから云わねえ事じゃアねえ、先方《むこう》は彼《あん》な姿で来たって八州の隠密だよ」
と一人の連《つれ》の者に云われ、一人は真蒼《まっさお》になり、ぶる/\と顫《ふる》え出し、碌々口もきけません様子。
○「なに本当に知っている訳じゃアごぜえやせん、朦朧《ぼんやり》と知ってるんで、へえ一寸《ちょっと》人に聞いたんで」
宗「聞いたら聞いたゞけの事を告げなさい、新町河原で渡邊祖五郎を殺害《せつがい》した春部梅三郎という者は何《いず》れへ逃げた」
○「あ彼方《あっち》へ逃げて……それから秩父《ちゝぶ》へ出たんで」
宗「うん成程、秩父へ出て」
○「それからこ甲府へ逃げたんで」
宗「秩父越しをいたして甲府の方へ八州が追掛《おっか》けたのか」
鐵「おゝおゝ仕様がねえな、本当に手前《てめえ》は饒舌《おしゃべり》だな」
○「饒舌だって剣術の先生や何かも皆《みん》な喋ったじゃアねえか………何《なん》でごぜえやす……えゝ其の八州が追掛《おっか》けて何したんで、当りを付けたんで」
宗「何ういう処に当りが付きましたな」
○「そりゃア何でごぜえやす、鴻の巣の宿屋
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