親の敵《かたき》を尋ねる身の上でございます」
○「うん、其の女が…成程」
侍「敵は此の一村《ひとむら》隔《お》いて隣村に居ります、僅《わずか》に八里山を越すと、現に敵が居りながら、女の細腕で討つことが出来ません、先方は浪人者で、私《わたくし》の父は杣《そま》をいたして居りましたが、山界《やまざかい》の争い事から其の浪人者が仲裁《なか》に入り、掛合《かけあい》に来ましたのを恥《はず》かしめて帰した事があります、其の争いに先方《さき》の山主《やまぬし》が負けたので、礼も貰えぬ所から、それを遺恨に思いまして、其の浪人が私の父を殺害《せつがい》いたしたに相違ないという事は、世間の人も申せば、私も左様に存じます、其の傍《そば》に扇子《せんす》が落ちてありました、黒骨の渋扇《しぶせん》へ金で山水が描《か》いて有って、確《たしか》に其の浪人が持って居りました扇子《おうぎ》で見覚えが有ります、どうか先生を武術修行のお方とお見受け申して、お頼み申しますが、助太刀をなすって敵《かたき》を討たして下さいませんか、始めてお泊め申したお方に何とも恐入りますが、助太刀をなすって本意を遂げさせて下されば、何《ど》の
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