婢「畏《かしこ》まりやした」
 と立って行って大勢の所へ顔を出しまして、
「どうかあの皆さん相宿の方に病人がありやすから、余《あんま》り大《でけ》え声をして、わア/\笑わないように、喧しいと病人が眠り付かねえで困るだから、静《しずか》になさえましよ」
侍「はい/\宜しい……病人がいるなら止しましょう」
○「小声でやってくだせえ、皆《みんな》は虚《そら》っぺえ話《ばなし》で面白くねえ、旦那が武者修行をした時の、蟒蛇《うわばみ》を退治《たいじ》たとか何とかいう剛《きつ》いのを聞きたいね」
侍「左様さ拙者は是迄恐ろしい怖いというものに出会った事はないが、※[#「鼬」の「由」に代えて「吾」、第4水準2−94−68]鼠《のぶすま》に両三度出会った時は怖いと思ったね」
○「ど何処《どこ》で」
侍「南部《なんぶ》の恐山《おそれざん》から地獄谷の向《むこう》へ抜ける時だ」
○「へえー名からして怖《おっか》ねえね恐山地獄谷なんて」
侍「此処《こゝ》は一騎打《いっきうち》の難所《なんじょ》で、右手《めて》の方《ほう》を見ると一筋《ひとすじ》の小川が山の麓《ふもと》を繞《めぐ》って、どうどうと小さい石を転が
前へ 次へ
全470ページ中337ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング