○「それから乱暴勝《らんぼうかつ》てえ野郎が焚火《たきび》に※[#「火+共」、第3水準1−87−42]《あた》って、金太《きんた》という奴を殴る機《はず》みにぽっぽと燃えてる燼木杭《やけぼっくい》を殴ったから堪《たま》らねえ、其の火が飛んで金太の腹掛の間へ入《へい》って、苦しがって転がりやアがったが、余程《よっぽど》面白うござえました」
侍「其様《そん》な事は面白くない」
○「そんなら旦那何ぞ面白え話を」
侍「先刻《せんこく》から空話《そらばなし》ばかり出たので、拙者の話を信じて聞くまいから、どうもやりにくい」
三十八
向座敷《むこうざしき》にてぽん/\と手を打ち、
宗「誰《たれ》も居ぬかな」
下婢「はい」
此の座敷に寝ているのは渡邊お竹で、宗達が看病を致して居りますので、
婢「お呼びなさいましたかえ」
宗「一寸《ちょっと》こゝへ入ってくれ」
婢「はい」
宗「序《ついで》に水を持って来ておくれ、病人がうと/\眠附《ねつ》くかと思うと向座敷で時々大勢がわアと笑うので誠に困る」
婢「誠にお喧《やかま》しゅうござりやしょう」
宗「其処《そこ》をぴったり閉めておくれ」
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