此の息子さんに免じてお前さんも堪弁《かんべん》なさい、何日《いつ》までも仇《あだ》に思っていると却《かえ》ってお前さんの死んだ御家来さんの為にもならん、宜《い》いか、又御亭主は客に対して無礼をしたとか、道楽をして棄置《すておか》れん、親に苦労をかけて堪《たま》らんから殺しましたと云って尋常に八州へ名告《なの》って出なさい、なれども一人の子を私《わたくし》に殺すのは悪い事じゃから髪の毛を切って役所へ持って行《ゆ》けば、是には何か能々《よく/\》の訳があって殺したという廉《かど》で、お前さんに甚《ひど》く難儀もかゝるまいと思う、然《そ》うして出家を遂《と》げ、息子さんの為に四国西国を遍歴して、其の罪滅《つみほろぼ》しをせんければ、兎《と》ても尋常《なみ》の人に成れんぞ」
五「はい/\」
僧「是から陰徳を施し、善事を行うが肝心、今までの悪業を消すは陰徳を積むより他に道はないぞ」
五「有難うございます」
僧「あゝ何うも気の毒な事じゃなア、お嬢さん」

        三十六

 お竹は不思議な事と心の内で忠平の霊に回向をしながら、
竹「ま、私《わたくし》は助かりましたが、誠に思い掛けない事で」
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