みました、死骸は田圃伝えに背負出《しょいだ》して、墓場へ人知れず埋めてしまえば、誰にも知れる気遣《きづか》いないと存じまして、忍んで参りました、道ならぬ事をいたした悪事は、忽《たちま》ち報い、一人の忰を殺しますとは此の上もない業曝《ごうさら》しで、実に悪い事は出来ないと知りました、私《わたくし》も最《も》う五十九でございます、お嬢さま何とも申し訳がございませんから、私は死んでしまい、貴方に申訳をいたします」
 と云切るが早いか、出刄庖丁を取って我が咽《のど》に突立てんとするから、
僧「あゝ暫く待ちなさい、まア待ちなさい、お前がこれ死んだからって言訳が立つじゃアなし、命を棄てたって何の足しにもなりゃアせん、嬢さんの御迷惑にこそなれ、宜《よ》いか先非《せんぴ》を悔い、あゝ悪い事をした、唯《たっ》た一人の子を殺したお前の心の苦しみというものは一通りならん事じゃ、是も皆《みな》罰《ばち》だ、一念の迷いから我子を殺し、其の心の苦しみを受け、一旦の懺悔《ざんげ》によって其の罪は消えている、見なさいお嬢様の一命は助かり、お前の子はお嬢様の身代りになったんじゃ、誠に気の毒なは此の息子さん、嬢さん何事も
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