あと》は柔かい布巾で拭きまして、一々|彼《あ》の通り包みまして、大殿様へ御覧に入れました」
長「いや耄《とぼ》けるなそんなら如何《いかゞ》の理由《わけ》で棚に糊付板《のりつけいた》が有るのだ」
千「あれはお箱の蓋の棧が剥《と》れましたから、米搗《こめつき》の權六《ごんろく》殿へ頼みまして、急拵《きゅうごしら》えに竹篦《たけべら》を削って打ってくれましたの」
長「耄けるな、其様《そん》なことを云ったって役には立たん、巧《うま》く瞞《ごま》かそうたって、然《そ》うはいかんぞ、此方《こちら》は確《しか》と存じておる、これ千代、其の方が怪しいと認めが附いて居《お》ればこそ検めなければならんのだ早く箱を持って来い/\」
 と云われてお千代はハッとばかりに驚きましたが、何ゆえ長助が斯様《こん》なことを云うのか分りませんでしたが、彼《あ》の通り検めたのを毀したと云うのは変だなと考えて、よう/\思い当りましたのは、先達《せんだっ》て愛想尽《あいそづか》しを云った恨みが、今になって出て来たのではないか、何事も無ければ宜《よ》いがと怖々《こわ/″\》にお千代が野菊白菊の入った箱を長助の眼の前へ差出しますと
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