、作左衞門が最前検めて置いた皿の毀れる気遣いはない、忰は何を云うのかと存じて居りますと、長助は顔色《かおいろ》を変えて、
長「これ千代、それ道具棚にある糊付板を此処《こゝ》へ持って来い……さ何う云う訳で此板《これ》を道具棚へ置いた」
千「はい、只今申上げます通り、あのお道具の箱の棧が剥《と》れましたから、打附けて貰おうと存じますと、米搗の權六が己《おれ》が附けて遣ろうと申して附けてくれましたので」
長「いゝや言訳をしたって役には立たん、其の箱の紐をサッサと解け」
千「そうお急ぎなさいますと、また粗相をして毀すといけませんもの」
長「汝《おのれ》が毀して置きながら、又|其様《そん》なこと申す其の手はくわぬぞ、私《わし》が箱から出す、さ此処《これ》へ出せ」
千「あなた、お静かになすって下さいまし、暴々《あら/\》しく遊ばして毀れますと矢張《やっぱ》り私《わたくし》の所為《せい》になります」
作「これこれ長助、手暴くせんが宜《よ》い、腹立紛れに汝《てまえ》が毀すといかんから、矢張《やっぱ》り千代お前検めるが宜《い》い」
千「はい/\」
 と是れから野菊の箱の紐を解いて蓋を取り、一枚/\皿を出
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