うか》願います」
と少し憤《いきどお》った気味で受合いましたから、大きにお竹も力に思って、床を展《と》って臥《ふせ》りました、和尚さまは枕に就《つ》くと其の儘旅疲れと見え、ぐう/\と高鼾《たかいびき》で正体なく寝てしまいました。お竹は鼾の音が耳に附いて、どうも眠《ね》られません、夜半《よなか》に密《そっ》と起きて便所《ようば》へまいり、三尺の開《ひら》きを開けて手を洗いながら庭を見ると、生垣《いけがき》になっている外は片方《かた/\》は畠で片方は一杯の草原《くさはら》で、村の人が通るほんの百姓道でございます。秋のことだから尾花《おばな》萩《はぎ》女郎花《おみなえし》のような草花が咲き、露が一杯に下りて居ります。秋の景色は誠に淋しいもので、裏手は碓氷の根方《ねがた》でございますから小山《こやま》続きになって居ります。所々《ところ/\》ちら/\と農家の灯火《あかり》が見えます、追々戸を締めて眠《ね》た処もある様子。お竹が心の中《うち》で。向うに幽《かす》かに見えるあの森は洪願寺様であるが、彼処《あすこ》へ葬り放しで此処《こゝ》を立つのは不本意とは存じながら、長く泊っていれば、宿屋の忰が来
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