ほう》であるゆえ大事にするためでも有りましょう、先祖が此の皿を一枚毀す者は実子たりとも指一本を切るという遺言状をこの皿に添えて置きましたと申すことで、ちと馬鹿々々しい訳ですが、昔は其様なことが随分沢山有りましたそうでございます。其の皿は実に結構な品でありますゆえ、誰《たれ》も見たがりますから、作左衞門は自慢で、件《くだん》の皿を出しワすのは、何《ど》ういうものか家例《かれい》で九月の節句に十八人の客を招待《しょうだい》して、これを出します。尤《もっと》も豪家ですから善《よ》い道具も沢山所持して居ります。殊に茶器には余程の名器を持って居りますから自慢で人に見せます。又御領主の重役方などを呼びましては度々《たび/\》饗応を致します。左様な理由《わけ》ゆえ道具係という奉公人がありますが、此の奉公人が頓《とん》と居附きません。何故《なぜ》というと、毀せば指一本を切ると云うのですから、皆道具係というと怖れて御免を蒙《こうむ》ります。そこで道具係の奉公人には給金を過分に出します。其の頃三年で拾両と云っては大した給金でありますが、それでも道具係の奉公人になる者がありません。中には苦しまぎれに、なんの
前へ 次へ
全470ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング