腹でございましょうが、あなたを私が見くびった訳でもなんでもない、実はその貴方にお費《かゝ》りのかゝらんように種々《いろ/\》と心配致しまして、馬子や舁夫《かごかき》を雇いましても宿屋の方で値切って、なるたけ廉《やす》くいたさせるのが宿屋の亭主の当然《あたりまえ》でへえ見下げたと思召《おぼしめ》しては恐入ります、只今御勘定を致します、へい/\どうぞ御免なすって」
と帳場へまいりまして、
五「あゝ大層|金子《かね》を持っている、彼《あれ》は何者か知らん」
と暫《しばら》くお竹の身の上を考えて居りましたが、別に考えも附きません。医者の薬礼から旅籠料、何や彼《か》やを残らず書付にいたして持って来ましたが、一ヶ月居ったところで僅かな事でございます。お竹は例の胴巻から金を出して勘定をいたし、そこ/\手廻りを取片附け、明日《あす》は早く立とうと舁夫《かごや》や何かを頼んで置きました。其の晩にそっと例の早四郎が忍んで来まして、
早「お客さん……お客さん……眠《ねぶ》ったかね、お客さん眠ったかね」
竹「はい、何方《どなた》」
早「へえ私《わし》でがすよ」
竹「おや/\御子息さん、さ此方《こちら》へ…
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