思いのうおっ晴《ぱら》し候《そろ》、巴蛇《あおだいしょう》の長文句|蠅々《はい/\》※[#かしく」の草書体、345−9]」
早「成程|是《こ》りゃア宜《え》いなア」
久「是《これ》じゃア屹度《きっと》女子《おなご》がお前《めえ》に惚れるだ、これを知れねえように袂《たもと》の中へでも投《ほう》り込むだよ」
 と云われ、早四郎は馬鹿な奴ですから、右の手紙を書いて貰って宅《うち》へ帰り、そっとお竹の袂へ投込《なげこ》んで置きましたが、開けて見たって色文《いろぶみ》と思う気遣《きづか》いはない。翌朝《よくあさ》になりますと宿屋の主人《あるじ》が、
五「お早うございます」
竹「はい、昨夜は段々有難う」
五「えゝ段々お疲れさま……続いてお淋しい事でございましょう」
竹「有難う」
五「えゝ、お嬢さん、誠に一国《いっこく》な事を申すようですが、私《わたくし》は一体斯ういう正直な性質《うまれつき》で、私どもはこれ本陣だとか脇本陣だとか名の有る宿屋ではございませんで、ほんの木賃宿の毛の生えた半旅籠同様で、あなた方が泊ったところが、さしてお荷物も無し、お連の男衆は御亭主かお兄様《あにいさま》か存じませんが、
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