話になって居ります程の身上《みのうえ》の宜しくない拙者ゆえ、何と仰せられても、斯様な事もいたすであろうと、さ人をも殺すかと思召《おぼしめ》しましょうが、何者が……」
祖「エーイ黙れ、確かの証拠あって知る事だ、天命|※[#「二点しんにょう+官」、第3水準1−92−56]《のが》れ難い、さ直《すぐ》にまいれ」
梅「と何ういう事の……」
祖「何ういう事も何もない、父の屍骸《しがい》の傍《かたわら》に汝の艶書《てがみ》を遺《おと》してあったのが、汝の天命である」
梅「左様なれば拙者打明けて恥を申上げなければ成りませんが、お笑い下さるな、小姓若江と若気の至りとは申しながら、二人ともに家出を致しましたは、昨年の九月十一日の夜《よ》で、あゝ済まん事、旧来御恩を受けながら其のお屋敷を出るとは、誠に不忠不義のことゝ存じたなれども、御拝領の品を失い、殊《こと》に若江も妊娠いたし奉公が出来んと申すので、心得違いの至りではあるが、拙者若江を連出し、当家へまいって隠れて居りましたなれども、不義|淫奔《いたずら》をして主家《しゅか》を立退《たちの》くくらいの不埓者《ふらちもの》では有りますけれども、お屋敷に対して
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