の方では祖五郎が来ようとは思いませんから驚きました。
梅「いやこれは/\思い掛ない……斯様《かよう》な処でお目にかゝり面目次第もない、まア何ういう事で此方《こっち》へ」
祖「汝《なんじ》も立派な武士《さむらい》だから逃隠《にげかく》れはいたすまい、何《なん》の遺恨あって父織江を殺害《せつがい》して屋敷を出た、殊《こと》に当家の娘と不義をいたせしは確かに証拠あって知る、汝の許《もと》へ若江から送った艶書が其の場に取落してあったが、よもや汝は人を殺すような人間でないと心得て居ったる処、屋敷から通知によって、確かに汝が父織江を討って立退《たちの》いたる事を承知致した、斯《か》くなる上は逃隠れはいたすまいから、届ける処へ届けて尋常に勝負を致せ」
と詰《つめ》かけました。
梅「御尤《ごもっと》もでござる、まア/\お心を静められよ、決して拙者逃隠れはいたしません、何も拙者が織江殿に意趣遺恨のある理由《わけ》もなし、何で殺害《せつがい》をいたしましょうか、其の辺の処をお考え下さい、何者が左様な事を申したか、実に貴方へお目にかゝるのは面目次第もない心得違い、此処《こゝ》へ逃げてまいりまして、当家の世
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