うずば》の上草履《うわぞうり》を履《は》いて庭へ下《お》り、開戸《ひらき》を開け、折戸の許《もと》へ佇《たゝず》んで様子を見ますと、本を読んでいる声が聞える。何処《どこ》から手を出して掛金を外すのか、但《たゞ》し栓張《しんばり》を取って宜《い》いか訳が分りません、脊伸《せいの》びをして上から捜《さぐ》って見ると、閂《かんぬき》があるようだが、手が届きません。やがて庭石を他《わき》から持ってまいりまして、手を伸べて閂を右の方へ寄せて、ぐいと開けて中へ入り、まるで泥坊の始末でございます。縁側から密《そっ》と覗《のぞ》いて見ますると、障子に人の影が映って居ります。
祖「はてな、此方《こっち》にいるのは女のような声柄《こえがら》がいたす」
 と密と障子の腰へ手をかけて細目に明けて、横手から覗いて見ますると、見違える気遣いはない春部梅三郎なれば、
祖「あゝ有難い、神仏《かみほとけ》のお引合せで、図《はか》らず親の仇《かたき》に廻《めぐ》り逢った」
 と心得ましたから、飛上って障子を引開け、中へ踏込んで身構えに及び、声を暴《あら》らげ、
祖「実父の仇《かたき》覚悟をしろ」
 と叫びましたが、梅三郎
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