る事になりましたが、姉は病気で立つことが出来ません。
祖「もし逃げられてはならん、あなたは後《あと》から続いて、私《わたくし》一人《ひとり》でまいります」
と忠平にも姉の事を呉々《くれ/″\》頼んで、鴻の巣を指して出立致しました。五日目に鴻の巣の岡本に着きましたが、一人旅ではございますが、お武家のことだから宿屋でも大切にして、床の間のある座敷へ通しました。段々様子を見たが、手掛りもありません、宿屋の下婢《おんな》に聞いたが頓と分りません、
祖「はてな……こゝに隠れていると云うが、まさか人出入《ひとではいり》の多い座敷に隠れている気遣いはあるまい、此処《こゝ》にいるに相違ない」
と便所へ行って様子を見廻したが、更に訳が分りません。
三十一
渡邊祖五郎は頻《しき》りに様子を探りますが、少しも分りません、夜半《よなか》に客が寝静《ねしずま》ってから廊下で小用《こよう》を達《た》しながら唯《と》見ますと、垣根の向うに小家《こや》が一軒ありました。
祖「はてな……一つ庭のようだが」
と折戸《おりど》を開けて、
祖「彼《あ》の家に隠れて居りはしないか」
と手水場《ちょ
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