うぞ》堪忍して下さい」
千[#「千」は底本では「長」]「恐入ります、是れから前々《もと/\》通り主《しゅう》家来、矢張千代/\と重ねてお呼び遊ばしまして、お目をお掛け遊ばしまして……」
長「そう云う事を云うだけに私《わし》は誠に困りますなア」
千「誠に恐入ります、大旦那さまのお帰り遊ばしません内に、お酒の道具を隠しましょうか」
長「あゝ仕舞っておくれ/\」
千「はい」
とそれ/″\道具を片附けましたが、是れから長助が憤《おこ》ってお千代につれなく当るかと思いました処、情《つれ》なくも当りませんで、尚更宜く致しまして、彼《あ》の衣類は汚い、九月の節句も近いから、これを拵えて遣るが宜《い》いと、手当が宜いので、お千代もあゝーお諦めになったか、有難い事だ、あんな事さえないと結構な旦那様であると一生懸命に奉公を致しますから、作左衞門の気にも入られて居りました。月日流るゝが如くで、いよ/\九月の節句と成りました。粂野美作守の重役を七里先から呼ばんければなりません、九の字の付く客を二九十八人|招待《しょうだい》を致し、重陽《ちょうよう》を祝する吉例で、作左衞門は彼《か》の野菊白菊の皿を自慢で出し
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