続の為になりませんから、確《しか》とお断り申しますよ」
長「誠にどうも……至極|道理《もっとも》……」
 と少しの間は額へ筋が出て、顔色《がんしょく》が変って、唇をブル/\震わしながら、暫く長助が考えまして、
長「千代、至極|道理《もっとも》だ、最う千代/\と続けては呼ばんよ、一言《ひとこと》だよ、成程何うもえらい、賢女だ、成程どうも親孝心、誠に正しいものだ、心掛けと云い器量と云い、余り気に入ったから、つい迷いを起して此様《こん》な事を云い掛けて、誠に羞入《はじい》った、再び合す顔はないけれども、真に思ったから云ったんだよ、併《しか》しお前に然《そ》う云われたから諦めますよ確《しか》と断念しましたが、おまえ此のことを世間へ云ってくれちゃア困りますよ、私《わし》は親父に何様《どん》な目に遇うか知れない、堅い気象の人だから」
千「私《わたくし》は世間へ申す処《どころ》じゃア有りませんが、あなたの方で」
長[#「長」は底本では「千」]「私《わし》は決して云わんよ、云やア自ら恥辱《はじ》を流布するんだから云いませんが、あゝ……誠に愧入《はじい》った、此の通り汗が出ます、面目次第もない、何卒《ど
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