、本当に私《わたくし》が思う心の丈《たけ》を云いましょうか」
長「聞きましょう」
千「それじゃア申しますが、屹度《きっと》、…身分も顧りみず大それた奴だと御立腹では困ります」
長「腹などは立たんからお云いよ、大それたとは思いません、小《しょう》それた位《ぐらい》に思います、云って下さい」
千「本当に貴方御立腹はございませんか」
長「立腹は致しません」
千「それなれば本当に申上げますが、私《わたくし》は貴方が忌《いや》なので……」
長「なに忌だ」
千「はい、私《わたくし》はどうも貴方が忌でございます、御主人さまを忌だなどと云っては済みませんけれども、真底私は貴方が忌でございます、只御主人さまでいらっしゃれば有難い若殿さまと思って居りますが、艶書《てがみ》をお贈り遊ばしたり、此の間から私にちょい/\御冗談を仰しゃることもあって、それから何うも私は貴方が忌になりました、どうも女房に成ろうという者の方で否《いや》では迚《とて》も添われるものじゃアございませんから、素《もと》より無い御縁とお諦め遊ばして、他《わき》から立派なお嫁をお迎えなすった方が宜しゅうございましょう、相当の御縁組でないと御相
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