らば、聊《いさゝ》か田地《でんじ》でも買い、新家《しんや》を建って、お母に下婢《おんな》の一人も附けるくらいの手当をして遣ろうじゃアないか。此の家《うち》は皆|私《わし》のもので、相続人の私だから何うにもなるから、お前さえ応《おう》と云えば、お母に話をして安楽にして遣ろうじゃアないか、若《も》しお母は堅いから遠山の苗字を継ぐ者がないとでもいうなら、夫婦養子をしたって相続人は出来るから、お前が此方《こっち》へ来ても仔細ないじゃアないか」
千「それは誠に結構な事で」
長「結構なれば然《そ》うしてくれ」
千「お嬉しゅうは存じますが」
長「さ、早くお父さまの帰らん内に応《うん》と云いな、酔った紛れにいう訳じゃアない、真実の事だよ」
千「私《わたくし》は貴方に対して申上げられませんものを、御主人さまへ勿体なくって……」
長「何も勿体ない事は有りませんから早く云いなさいよ」
千「恐入ります」
長「其様《そん》なに羞《はず》かしがらんでも宜しいよ」
千「貴方|私《わたくし》のような卑しい者の側へお寄り遊ばしちゃアいけません、私が困ります、そうして酒臭くって」
長「ね千代/\千代」
千「それじゃア貴方
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