千「何をなさいます、其様な事を遊ばしますと、私《わたくし》は最《も》うお酌にまいりませんよ」
長「酔った紛れに、少しは酒の席では冗談を云いながら飲まんと面白うないから、一寸《ちょっと》やったんだが、どうもお前は堅いね、千代/\」
千「はい最うお酌を致しますまいと思います、最うお止し遊ばせ、お毒でございますよ」
長「千代/\」
千「また始まりました」
長「親さえ得心ならば何も仔細はあるまい、何うだ」
千「そうではありますが、まア若殿様、私《わたくし》の思いますには、夫婦の縁と云うものは仮令《たとえ》親が得心でも、当人同志が得心でない事は夫婦に成れまいかと思います」
長「それは然うさ、だがお前さえ得心なら宜《よ》いが、いやなら否《いや》と云えば、私《わし》も諦めが附こうじゃアないか」
千「私《わたくし》のような者を、私の口から何う斯うとは申されませんものを、余り恐入りまして」
 其の時お千代は身を背《そむ》けまして、
千「何とも申上げられませんものを、余り恐入りまして」
長「恐入らんでも宜しいさ、お母《ふくろ》さえ得心なら、母諸共|此方《こっち》へ引取って宜しい、もし窮屈で否《いや》な
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