の心掛けを看抜《みぬ》いて、此の人ならばと斯う思ったから、実はお前に心のたけを山々書いて贈ったのである、然《しか》も私は丹誠して千代尽しの文で書いて贈ったんだよ」
千「何でございますか私《わたくし》は存じませんもの」
長「存じませんて、私《わし》の丹誠したのを見て呉れなくっちゃア困りますなア、どうかお前の母に会って、母諸共引取っても宜しいや」
千「私《わたくし》の母は冥加至極有難いと申しましょうけれども、貴方のお父様《とっさま》が御得心の有る気遣《きづか》いはありますまい、私のようなはしたない者を御当家《こちら》さまの嫁に遊ばす気遣いはございませんもの」
長「いえ、お前が全く然《そ》う云う心ならば、私《わし》は親父に話をするよ、お前は大変親父の気に入ってるよ、どうも沈着《おちつき》があって、器量と云い、物の云いよう、何や角《か》や彼《あ》れは別だと云って居るよ」
千「なに、其様《そん》な事を仰しゃるものですか」
長「なに全く然う云ってるよ、宜《よ》いじゃアないか、ね千代/\千代」
 と雀が出たようで、無理無態にお千代の手を我《わが》膝へグッと引寄せ、脇の下へ手を掛けようとすると、振払い
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