ます」
權「むう、余程悪い事をしたな、免《ゆる》すめえ、困ったなア、なに物を喰わねえ」
有「へえ、実は昨日《きのう》の正午《ひる》から喰いません」
權「じゃア、ま肯《き》くか肯かねえか分らんけれど、話しても見ようし、お飯《まんま》は喰わしてやろう」
有「有難うござえます」
權「屋敷へつか/\無沙汰《むさた》に入って呻ったりしないで、門から入れば宜《い》いに……何しろ然《そ》う泥だらけじゃア仕方がねえから小屋へ来い」
有「有難うごぜえます」
權「さ行け」
有「貴方ね、疝癪で腰が攣《つ》って歩けません」
權「困った奴だ、何うかして歩け、此の棒を杖《つ》け」
有「へえ、有難うごぜえます」
權「それ確《しっ》かりしろ」
有「へえ」
權「提灯を持て」
有「へえ」
 と提灯の光ですかし見ると、去年見たよりも尚《な》お肥《ふと》りまして立派になり、肩幅が張ってゝ何うも凛々《りゝ》しい男で、怖いから、
有「へえ参ります」
權「さ行《ゆ》け」
有「旦那さま、誠に恐入りますが、片方《かた/\》に杖を突いても、此方《こっち》の腰が何分|起《た》ちませんから、左の手をお持ちなすって」
權「世話アやかす奴だな、
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