呻《うな》る声がしますから、權六は怪しんで透《すか》して見て、
權「何《なん》だ……呻ってるのは誰だ」
男「へえ、御免下さい、どうかお助けなすって下さいまし」
權「誰だ……暗い藪の中で……」
男「へえ、疝癪《せんしゃく》が起りまして歩くことが出来ません者で…」
權「誰だ……誰だ」
男「へえ、あなたは遠山様でございますか」
權「何うして己を……汝《われ》は屋敷の者か」
男「へえ、お屋敷の者でごぜえます」
權「誰だ、判然《はっきり》分らん、待て/\」
 と懐から手丸提灯《てまるぢょうちん》を取出し、懐中附木《かいちゅうつけぎ》へ火を移して、蝋燭へ火を点《とも》して前へ差出し、
權「誰だ」
男「誠に暫く、御機嫌宜しゅう……だん/″\御出世でお目出度うござえます」
權「誰だ」
有「えゝ、お下屋敷の松蔭大藏様の所に奉公して居りました、有助と申す中間《ちゅうげん》でござえます」
權「ウン然《そ》うか、碌に会った事もない、それとも一度か二度会った事があるかも知れんが、忘れた、それにしても何うしたんだ」
有「へえ、あなたは委《くわ》しい事を御存じありますめえが、去年の九月少し不首尾な事がありまして、家
前へ 次へ
全470ページ中253ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング