していた、手前は彼《あ》の手紙を何者かに奪《と》られたな」
有「へえ、春部に奪られたので、春部の彼奴《あいつ》が若江という小姓と不義《いたずら》をして逃げたんで、其の逃げる時にお馬場口から柵矢来《さくやらい》の隙間の巾の広い処から、身体を横にして私《わたくし》が出ようと思います途端に出会《でっくわ》して、実にどうも困りました」
大「手紙を何うした奪られたか」
有「それがお前さん、鼻を摘《つま》まれるのも知れねえ深更《よふけ》で、突然《いきなり》状箱へ手を掛けやアがッたから、奪られちゃアならねえと思いやして、引張ると紐が切れて、手紙が落《おっ》こちる、とうとう半分|引裂《ひっさ》かれたから、だん/\春部の跡を尾《つ》いて行《い》くと、鴻の巣の宿屋へ入りやしたから、感が悪い俄盲ッてんで、按摩に化けて宿屋に入込《いりこ》み一度は旨く春部の持っていた手紙の裂《きれ》を奪《と》ったが、まんまと遣《や》り損《そこ》なって、物置へ棒縛りにして投込まれた、所で漸《ようや》く縄脱《なわぬ》けえして逃出しましたが、近辺にも居《い》られやせんから、久しく下総《しもふさ》の方へ隠れていやしたが、春部にあれを奪
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