掛け、縛って連れて行《ゆ》かなければならん」
 と是から物置へまいり、曲者を曳出《ひきだ》そうと思いますと、何時《いつ》か縄脱《なわぬけ》をして、彼《か》の曲者は逐電致してしまいました。そこで八州の手を頼み、手分《てわけ》をいたして調べましたが、何うしても知れません、なか/\な奴でございます。さて明和の五年のお話で……此の年は余り良い年ではないと見えまして、三月十四|日《か》に大阪|曾根崎新地《そねざきしんち》の大火で、山城は洪水でございました。続いて鳥羽辺が五月|朔日《ついたち》からの大洪水であった、などという事で、其の年の六月十一日にはお竹橋《たけばし》へ雷《らい》が落ちて火事が出ました、などと云う余り良い事はございません。二月|五日《いつか》、粂野のお下屋敷では午祭《うまゝつり》の宵祭《よみや》で大層|賑《にぎや》かでございます。なれども御舎弟様御不例に就《つ》きまして、小梅のお中屋敷にいらしって、お下屋敷はひっそり致して居りますが、例年の事で、大して賑かな祭と申す方ではないが、ちら/\町人どもがお庭拝見にまいります。松蔭大藏の家来有助は姿を変え、谷中あたりの職人|体《てい》に扮
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