」
梅「少し屋敷に心当りの者もある、此の書面は其の方の主人松蔭が書いたのか」
曲「いえ……誰が書いたか存じませんが、大切に持って行《い》けよ、落したり失《なく》したりする事があると斬っちまうと云われて恟《びっく》りしたんで、其の代り首尾好く持って行《ゆ》けば、金を二十両貰う約束で」
梅「むゝう……清藏どん、今に夜《よ》が明けてから一詮議《ひとせんぎ》しましょうから、冷飯《ひやめし》でも喰わして物置へ棒縛りにして入れて置いて下さい」
二十九
清藏は曲者を引立《ひった》てまして、
清「これ野郎立たねえか、今|冷飯《まんま》喰わしてやる、棒縛り程楽なものはねえぞ」
と是から到頭棒縛りにして物置へ入れて置きました。翌日梅三郎は曲者から取返した書面を出して見ると、再び今一つの裂端《きれはし》も一緒になっていたので、これ幸いと曲者の持っていた書面と継合《つぎあわ》せて見まして、
梅「中田千早《なかだちはや》様へ常磐《ときわ》よりと……常磐の二字は松蔭の匿名《かくしな》に相違ないが、千早と云うが分らん、彼《あ》の下男を縛ってお上屋敷へ連れて往《ゆ》こう、それにしても八州の手に
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