の、些《ちっ》とばかりの地面へ家《うち》を建てゝ、楽に暮していた風流の隠居さんが有りまして、王子の在へ行って聞きゃア直《すぐ》に分るてえますから、実は其処《そこ》は池《いけ》の端《はた》仲町《なかちょう》の光明堂《こうみょうどう》という筆屋の隠居所だそうで、其家《そこ》においでなさる方へ上げれば宜《よ》いと云付《いいつ》かって、私《わたくし》が状箱を持ってお馬場口から出ようとすると、今考えれば旦那様で、貴方に捕《つか》まったので、状箱を奪《と》られちゃアならんと思いやして一生懸命に引張《ひっぱ》る途端、落ちた手紙を取ろうとする、奪られちゃア大変と争う機《はず》みに引裂《ひっさ》かれたから、屋敷へ帰ることも出来ず、貴方の跡を尾《つ》けて此方《こちら》へ入った限《ぎ》り影も形も見えず、だん/\聞けば、あのお小姓のお家《うち》だとの事ですから、俄盲《にわかめくら》だと云って入り込んだのも只其の手紙せえ持って行《い》けば宜《い》いんで、是を落すと私《わたくし》が殺されたかも知れねえんで」
梅「うん、わかった、いや大略《あら/\》分りました」
清「大略《あら/\》ってお前さんの心に大概分ったかえ
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