のか……だから最初《てんで》武家奉公は止そうと思った」
祖「忠平、親父が来たのじゃアないか」
忠「へい、親父がまいりました」
祖「おや/\宜くおいでだ、岩吉|入《はい》んな」
岩「御免なせえまし、誠にお力落しさまで……今度急に忰を連れてお出でなさる事になったんで、まゝ是はどうも武家奉公をすれば当然《あたりまえ》のことで、へえ私《わたくし》も五十八で」
祖「貴様も老《と》る年で親父も困ろうから跡へ残っているが宜《よ》いにと云っても、彼《あれ》が真実に何処までも随《つ》いて行ってくれるという、その志を止められもせず、貴様には誠に気の毒でね」
岩「どうも是もまア武家奉公で、へゝゝゝ私《わたくし》は五十八でげす」
忠「お父《とっ》さん、一つ事ばかり云ってゝ困るね其様《そん》な事を云うものではない、明日《あした》お立だからお餞別《はなむけ》をしなければなりませんよ」
岩「え」
忠「お餞別《はなむけ》をしなさいよ」
岩「なんだ……お花……は供《あ》げて来たよ」
忠「分らないよ、お餞別《せんべつ》」
岩「え……煎餅《せんべい》を……なんだ」
忠「旅へ入らっしゃるお土産《みやげ》をよ」
岩「うん/\…
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