けれども、旦那様が何も手前《てめえ》を連れてって下さる事アねえ、何う考《かんげ》えても」
忠「分らん事をいうね、自分の御恩になった御主人様が斯ういう訳になったからだよ」
岩「何ういう訳に」
忠「他人《ひと》に殺されてお暇《いとま》になったんだよ」
岩「お暇……てえのは……お屋敷を出るんだろう」
忠「然《そ》うさ」
岩「出て……」
忠「分らんね、零落《おちぶれ》てしまうんだよ、御浪人になるんだよ、それだから私が従《つ》いて行かなければならない、仮令《たとえ》私が御免を蒙《こうむ》ると云ってもお前が己が若ければお供をして行《ゆ》くとこだが、手前《てめえ》何処《どこ》までもお供申して御先途《ごせんど》を見届けなければならんと云《い》うのが[#「云《い》うのが」は底本では「云《い》のが」]当然《あたりまえ》な話だ、其のくらいな覚悟が無ければ、頭《あたま》で武家奉公をさせんければ宜《い》いや、然《そ》うじゃアありませんか、お前さんは屹度《きっと》野暮《やぼ》に止めるに違いないと思ったから、手紙を上げたんだ、分りませんかえ」
岩「むゝ……分った、むゝう成程|侍《さむらい》てえものは其様《そん》なも
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