なら其の様にちゃんと己に斯ういう訳でお供を仕なければならぬがと、宜く己に得心させてから行《い》くが宜《い》い、ふいと黙って立っちまっては大変だと思ったから、遅くなりましてもと御門番へ断って来たんだ、えゝおい」
忠「お供してまいらなければならないんだよ、お嬢様は脾弱《ひよわ》いお体、若旦那さまは未だお年がいかないから、信州までお送り申さなければなりません、お屋敷へ帰る時節があれば結構だが、容易に御帰参は叶うまいと思うが、長々《なが/\》留守になりますから、お前さんも身をお厭《いと》いなすって御大切《ごたいせつ》に」
岩「其様《そん》なことを云ったって仕様がない、己は他に子供はない、お菊と手前《てめえ》ばかりだ、ところが菊は彼《あ》んな訳になっちまって、己《おら》アもう五十八だよ」
忠「それは知ってます」
岩「知ってるたって、己《おれ》を置いて何処《どこ》かへ行ってしまうと云うじゃアねえか、前の金太《きんた》の野郎でも達者でいれば宜《い》いが、己も此の頃じゃア眼が悪くなって、思うように難かしい物は指せなくなって居るから困る」
忠「困るって、是非お供をしなくっちゃアなりません」
岩「成らねえ
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