《どころ》はないが、男一人の身の上だから、何処《いずく》の山の中へまいりましても喰うだけの事は出来ます、お前は此処《こゝ》に止《とゞ》まって聟を取り、家名相続をせんければならんから、拙者一人で往《ゆ》きます」
清「ま、お待ちなせえ……そんな義理立《ぎりだて》えして無闇に往ったっていけねえ、二人で出て来たものが、一人置いてお前《めえ》さんが往ったら娘《あま》も快《よ》くねえ訳だア、宜《よ》く相談して往《い》くが宜《え》い、今草鞋銭をくれると云うから待てよ、えゝぐず/\云っちゃア分らねえ、判然《はっきり》云えよ、泣きながらでなく……彼《あ》の人ばかり追返《おっけえ》しちゃア義理が済むめえ、色事だって親の方にも義理があるから追返す位《くれえ》なら首でも縊《つ》るか、身い投げておっ死《ち》ぬというだ」
母「篦棒《べらぼう》……死ぬなんて威《おど》し言《ごと》を云ったら、母親《おふくろ》が魂消て置くべいかと思って、死ぬなんてえだ、死ぬと云った奴に是迄死んだ例《ためし》はねえ、さ只《たっ》た今死ね、己《おれ》は義理さえ立てば宜《え》い、汝《われ》より他に子はねえが、死ぬなんて逆らやアがって、死ぬな
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