いて来た侍は何様《どん》な人だか。と横目でじろりと見ながら、自分の方より段々前へ進み出まして
母「お若、今清藏に聞きまして魂消《たまげ》ましたぞ、汝《われ》は情夫《おとこ》を連れて此処《こけ》へ走って来たではねえか、何ともはア云様《いいよう》のねえ親不孝なア奴だ、これ屋敷奉公に出すは何のためだよ、斯ういう田舎にいては行儀作法も覚えられねえ、なれども鴻の巣では家柄の岡本の娘だアから屋敷奉公に上げ、行儀作法も覚えさせたらで、金をかけて奉公に遣ったのに、良《え》い事は覚えねえで不義《わるさ》アして、此処《こけ》へ走って来ると云うは何たる心得違《こゝろえちげ》えなア親不孝の阿魔だか、呆れ果てた、最《も》う汝《われ》の根性を見限って勘当してくれるから、何処《どけ》へでも出て往《い》け、石原の舎弟に合わす顔が無《ね》え、彼《あれ》が汝の婿だ、去年|宿下《やどさが》りに来た時、石原へ連れて往くのに、先方《むこう》は田舎育ちの人ゆえ、汝が屋敷奉公をして立派な姿で往くが、先方が木綿ものでいても見下げるな、汝が亭主になる人だよと、何度も云って聞かせ、お父様《とっさん》が約束して固く極めた処を承知していなが
前へ
次へ
全470ページ中208ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング