て聞かした其の上で、其の人へ義理だ、娘《あま》には草鞋銭《わらじせん》の少しもくれべえ」
清「うむ、それは沢山《たんと》遣《や》るが宜《え》え、新家にいるだよ」
と清藏が先へ駈出してまいり、
清「今|此処《こけ》へお母《ふくろ》が来るよ」
若「お母《っか》さんが怒《おこ》って何とか仰しゃったかえ」
清「怒るたって怒らねえたって訳が分らねえ、彼様《あん》なはア堅《かて》え義理を立てる人はねえ、此の前|彌次郎《やじろう》が家《うち》の鶏《とり》を喜八《きはち》が縊《し》めたっけ、あの時お母《ふくろ》が義理が立たねえって其の通りの鶏を買って来《こ》ねえばなんねえと、幾ら探しても、あゝいう毛がねえで困ったよ、あゝいう気象だから、お前《めえ》さまも其の積りで、田舎者が分らねえ事をいうと思って、肝《きも》を焦《いら》しちゃアいけねえよ、腹立紛れに何を云うか知んねえ、来た/\、さ此方《こっち》へお母」
母「あゝ薄暗い座敷だな、行灯《あんどん》を持って来な……お若/\、此方《こっち》へ出ろよ、此処《こけ》へ出ろ、最《も》う少し出てよ」
お若は間が悪いから、畳へぴったり手を突いて顔を上げ得ません。附
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