、宿下《やどさが》りか」
清「それがね、お屋敷|内《うち》でね、一つ所で働く若《わッけ》え侍《さむれえ》があって、好《え》え男よ、其方《そっち》を掃いてくんろ、私《わし》イ拭くべえていった様な事から手が触り足が触りして、ふと私通《くッつ》いたんだ、だん/\聞けば腹ア大《でか》くなって赤児《ねゝこ》が出来てみれば、奉公は出来ねえ、そんならばとって男を誘い出して、済みませんから老僕《じい》や詫言をしてくんろってよ、どうかまアね、本当に好《え》いお侍《さむれえ》だよ」
母「むゝう……じゃア何か情夫《いろおとこ》を連れやアがって駈落いして来たか」
清「うん突走《つッぱし》って来ただ」
母「それから汝《われ》何処《どこ》へ入れた」
清「何処だって別に入れ処《どこ》がねえから、新家《しんや》の六畳の方へ入れて飯《まんま》ア喰わして置いただ」
母「馬鹿野郎、呆れた奴だよ、何故|宅《うち》へ引入れた、何故敷居を跨《また》がしたよ、屋敷奉公をしていながら、不義《わるさ》アして走って来るような心得違《こころえちが》えな奴は、此処《こゝ》から勝手次第に何処《どこ》へでも往《ゆ》くが宜《え》えと小言を云って、
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