だが、暗いので分らん。
梅「えゝもし……其処《そこ》においでのお方」
男「はっ……あー恟《びっく》りした、はあーえら魂消《たまげ》やした、あゝ怖《おっ》かねえ……何かぽく/\黒《くれ》え物が居ると思ったが、こけえらは能《よ》く貉《むじな》の出る処だから」
若「あれまア、忌《いや》な、怖いこと……」
男「まだ誰か居るかの……」
梅「いえ決して心配な者ではありません、拙者は旅の者でござるが、足弱連《あしよわづれ》で難儀致して居《お》るので、駕籠を雇いたいと存ずるが、此の辺に駕籠はありますまいか、然《そ》うして鴻の巣まではまだ何《ど》の位ありましょう、それに其方《そなた》は御近辺のお方か、但し御道中のお人か」
男「私《わし》は鴻の巣まで帰《けえ》るものでござえますが、駕籠を雇って後《あと》へ帰《けえ》っても、十四五丁|入《へい》らねえばなんねえが、最《も》う少し往《い》けば鴻の巣だ、五丁半べえの処だアから、同伴《つれ》でも殖《ふ》えて、まアね少しは紛《まぎ》れるだ、私も怖《おっか》ねえと思って、年い老《と》ってるが臆病でありやすから、追剥《おいはぎ》でも出るか、狸でも出たら何うしべえかと考え
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