したので、私《わたくし》は此様《こんな》に歩いた事はないものですから、最《も》う何うしても往《い》けません」
梅「往《い》けませんたって…誠に子供のようなことを云っているから困りますな、是から私《わし》の家来の家《うち》へでも往くならまだしも、お前の親の許《もと》へ往って、詫言《わびごと》をして、暫《しばら》く置いて貰わなければなりません、それだのにお前が其処《そこ》で草臥れたと云って屈《かゞ》んで、気楽な事を云ってる場合ではありません」
若「私《わたくし》も実に心配ですが、どうも歩けませんもの、もう少しお駕籠をお雇い遊ばすと宜しゅうございましたのに」
梅「其様《そん》なことを云ったって、今時分こゝらに駕籠はありませんよ、それでなくとも装《なり》はすっかり変えても、頭髪《あたま》の風《ふう》が悪いから、頭巾を被っても自然と知れます、誠に困りました」
若「困るたって、どうも歩けませんもの」
梅「歩けんと云って、そうして居ては……」
若「少し負《おぶ》って下さいませんか」
梅「何うして私《わし》も草臥れています」
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