しゅったつ》を致そうと思いますと、秋雨《あきさめ》が大降《おおぶり》に降り出してまいって、出立をいたす事が出来ませんから、仕方なしに正午過《ひるすぎ》まで待って居りまして、午飯《ひるはん》を食《たべ》ると忽《たちま》ちに空が晴れて来ましたから、
梅「どうか此宿《こゝ》を出る所だけは駕籠に仕よう」
と駕籠で大宮までまいりますと、もう人に顔を見られても気遣いはないと、駕籠をよして互に手を引合い、漸々《だん/\》大宮の宿《しゅく》を離れて、桶川《おけがわ》を通り過ぎ、鴻《こう》の巣《す》の手前の左は桑畠で、右手の方は杉山の林になって居ります処までまいりました。御案内の通り大宮から鴻の巣までの道程《みちのり》は六里ばかりでございます。此処《こゝ》まで来ると若江は蹲《しゃが》んだまゝ立ちません。
梅「何うした、足を痛めたのか」
若「いえ痛めやア致しませんが、只一体に痛くなりました、一体に草臥《くたび》れたので、股《もゝ》がすくんで些《ちっ》とも歩けません」
梅「歩けないと云われては誠に困るね、急いで往《い》かんければなりません」
若「も往《ゆ》けません、漸《ようよ》う此処まで我慢して歩いて来ま
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