が、起請まで取交《とりかわ》して心中を仕ようとは思いません、実に憎い奴とは思いながら、誠に不憫な事をして、お前の心になって見れば、立腹する廉《かど》はない、お前には誠に気の毒で、忠平どんも未だ年若《としわか》ではあるし、他に兄弟もなく、嘸《さぞ》と察する、斯うして一つ屋敷内《やしきうち》に居るから、恥入ることだろうと思う、実に気の毒だが、斯《こ》の道ばかりは別だからのう」
忠「へえ、(泣声にて)お父《とっ》さん何《なん》たる事になりましたろう、私《わたくし》は旦那様の処へ奉公をして居りましても、他の足軽や仲間共に対して誠に顔向けが出来ません、一人の妹が此様《こん》な不始末を致し、御当家様へ申訳がありません」
大「いや、仕方がないから、屍体《したい》のところは直《すぐ》に引取ってくれるように」
岩「へえ畏《かしこま》りました」
 と岩吉も忠平も本当らしいから、仕方がない、お菊の屍骸を引取って、木具屋の岩吉方から野辺の送りをいたしました。九月十三|夜《や》に、渡邊織江は小梅の御中屋敷《おなかやしき》にて、お客来がござりまして、お召によって出張いたし、お饗応《もてなし》をいたしましたので、余
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