よ、別段に目をかけて下さるの、何ういう事でと聞きましたら、私ア旦那さまのお手が附いたけれども、此の事が知れては旦那様のお身の上に障《さわ》るから、お前一人得心で居てくれろと申しますから手前は冥加至極な奴だ、彼様《あん》な好《よ》い男の殿様のお手が附いて……道理でお屋敷へ上《あが》る時から、やれこれ目を掛けて下さると思った、併《しか》し他《ほか》の奉公人の妬《そね》みを受けやアしないかと申しましたが、結構な事だ有難いことだと実は悦んで安心していました、菊も悦んで親へ吹聴致すくらいで、何うして林藏さんと……」
大「こら/\大きな声をしては困りますな、併し岩や恋は思案の外《ほか》という諺もあって、是ばかりは解りませんよ、そんならば宅《うち》にいて気振《けぶり》でも有りそうなものだったが、少しも気振を見せない、尤《もっと》も主《しゅう》家来だから気を詰《つめ》るところもあり、同じ朋輩同志人目を忍んで密会《あいびき》をする方が又|楽《たのし》みと見えて、林藏という者が来た時から、菊が彼《かれ》に優しくいたす様子、林藏の方でもお菊さん/\と親《したし》む工合《ぐあい》だから、結構な事だと思って居た
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