なります、指物屋の岩吉が飛んでまいり、船上忠平という二十三になる若党も、織江方から飛んでまいりました。
大「これ/\此処《こゝ》へ通せ、老爺《じゞい》此処へ入れ」
岩「はい、急にお使《つかい》でございましたから飛んで参《めえ》りました、どうも飛んだことで」
大「誠に何ともはやお気の毒な事で、斯ういう始末じゃ」
岩「はい、どうも此の度《たび》の事ばかりは何ういう事だか私《わし》には一向訳が分りません、貴方様《あんたさま》へ御奉公に上げましてから、旦那様がお目をかけて下さり、斯ういう着物を、やれ斯ういう帯をと拵《こしら》えて戴き、其の上お小遣いまで下さり、それから櫛《くし》簪《かんざし》から足の爪先まで貴方が御心配下さるてえますから、彼様《あん》な結構な旦那さまをしくじっちゃアならんよ、己は職人の我雑者《がさつもの》で、人の前で碌に口もきかれない人間だが、行々《ゆく/\》お前を宜《い》い処へ嫁付《かたづ》けてやると仰しゃったというから、私はそれを楽《たのし》んで居りましたが、何ういうわけで林藏殿と悪い事をすると云うは……のう忠平、一つ屋敷にいるから手前は他の仲間衆《ちゅうげんしゅう》の噂で
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