が明けると直《すぐ》に之を頭《かしら》へ届けました。又《ま》た有助と云う男に手紙を持たせて、本郷春木町三丁目の指物屋《さしものや》岩吉方へ遣《つか》わしましたが、中々|大騒《おおさわぎ》で、其の内に検使《けんし》が到来致しまして、段々死人を検《あらた》めますと、自ら死んだように、匕首《あいくち》を握り詰めたなりで死んで居ります。林藏も刀の柄元を握詰め喉を貫《つ》いて居《おり》ますから、如何《どう》いう事かと調べになると、大藏の申立《もうしたて》に、平素《つね》から訝《おか》しいように思って居りましたが、予《かね》て密通を致し居り、痴情のやる方なく情死を致したのかも知れん、何か証拠が有ろうと云うので、懐中《ふところ》から守袋《まもりぶくろ》を取出して見ると、起請文が有りましたから、大藏は小膝を礑《はた》と打《うち》まして、
大「訝しいと存じて、咎《とが》めた時に、露顕したと心得情死を致しましたと見ゆる、不憫《ふびん》な事を致した、なに死なんでも宜《よ》いものを、彼《あれ》までに目を懸けて使うてやったものを」
 などゝ、真《まこと》しやかに陳《の》べて、検使の方は済みましたが、今年五十八に
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